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インゴット・シルバーとコイン・シルバー

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ー よくある間違いと重要な違いを解説 ー

 

ネイティブ・アメリカン、すなわち日本語におけるアメリカン・インディアンのジュエリーを収集するコレクターや、それをビジネスとするディーラーに必ずつきまとう、むしろ不必要な誤解の中で最も多いのが「インゴット・シルバー」と「コイン・シルバー」の正確な解釈だと思います。

曖昧な解釈を持ったままインディアンジュエリーと付き合っているほとんどの人は、「インゴット・シルバー」をなぜか昔の時代の何か特別な銀の種類で、ものすごく貴重な素材だと勘違いしている事が多く、たぶん心の中ではそうであってほしいと願っていることでしょう。
しかし、事実は違っており、本来の意味はもっと単純なものなのです。

                                                 

「インゴット・シルバー」とは単純に銀塊という意味であり、どんな時代のものであれ、どんな純度なものであれ、単純に溶かされて塊に成型されたものを示します。

それは、昔々に銀貨を溶かして塊にされたものかもしれませんし、または銀製のナイフやフォークをつい先日溶かしたものかもしれませんし、はたまた屑銀や使い物にならなくなったシルバージュエリーなどを溶かして塊に成型したものかもしれません。
つまり、ビンテージのインディアンジュエリーを収集する人々が俗に言う「インゴット・シルバー」とは、ただ単に銀を溶かして固めたもの以外の何物でもないのです。
インゴット・シルバーの純度は90%以上のものが比較的多いですが、その純度でさえ、昔の銀貨から作られたものなのか、はたまた非常に純度の高いあなたのお婆ちゃんの形見から作られたものなのか、はたまたその両方を混ぜ合わせて塊にしたのか、要は銀塊の原材料とその割合でそれぞれ変わってきます。

「インゴット・シルバー」は必ずしも「コイン・シルバー」ではありませんし、その反対に「コイン・シルバー」も必ずしも「インゴット・シルバー」とは限りません。
しかし、幸いにも古い歴史を持つネイティブ・アメリカンのシルバージュエリー、すなわちビンテージ・ジュエリーのほとんどは「インゴット・シルバー」であり、同時に「コイン・シルバー」なのです。

                                                 

「コイン・シルバー」とはアメリカのサウスウェストのインディアンジュエリー工房において、アメリカ、またはメキシコの銀貨から作られたシルバーのことを指します。
長い年月をかけて学んだ製法は、基本的にはコインそのものを直にハンマーで叩いてジュエリー作りをしますが、時にはそれらを溶かして「トゥファ・キャスト(Tufa Casting)」と呼ばれる砂のモールド(型)に流し込んで型取りをするか、または一度銀塊に仕上げてからジュエリーの材料として使用します。

この時に、銀貨を直に叩いてジュエリーを作り上げることを「コイン・シルバー」と呼びますが、「インゴット・シルバー」とは呼びません。
これらの銀貨を一度溶かして、トゥファ・キャストの型に流し込んでシルバーを作ったり、銀塊(インゴット)にしたものは「コイン・シルバー」と呼ぶこともできますし、「インゴット・シルバー」と呼ぶこともできます。
また、もっと詳細な言い方をすると「コイン・インゴットシルバー」や「インゴット・コインシルバー」などと呼ばれたりもします。

大多数のビンテージ「インゴット・シルバー」ジュエリーは、アメリカ銀貨、50セント銀貨、25セント銀貨、またはメキシコ・ペソなどを溶かす伝統的な製法によって作られたものを示し、またこれらのことは、「インゴット・シルバー」または「コイン・シルバー」と呼ぶことができる、というのが正確な解釈なのです。
つまり、ビンテージのインディアンジュエリーに関しては、コインを直に叩いて作ったものを「コイン・シルバー」、それ以外のものは「コイン・シルバー」とも「インゴット・シルバー」とも言えるということなのです。

                                                 

ちなみにジュエリーに「Sterling Silver」と書いてあるのは、純度925(92.5%)、割り金(金属の強度を上げる銅などのつなぎ)7.5%の銀合金のことです。
純度の高い銀を溶かして925の「インゴット・シルバー」を作り上げれば、スターリング・シルバーのジュエリーが完成するということですが、「コイン・シルバー」は純度900のため、スターリング・シルバーとは呼ぶことはできません。

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